コラム
公開日:2025/01/14
更新日:2025/01/14
相続で揉める家族の特徴|揉める人・揉めない人の差は?揉めないためにどうする?

相続が発生するとどのような家庭でもトラブルになるリスクが潜んでいます。
相続で問題が生じやすい家族には、共通する傾向が見られます。そのような傾向が見られる場合は、生前に相続対策を講じておくことが大切です。
今回は、相続で問題が生じやすい家族に見られることがある特徴や揉める人、揉めない人との差、揉めないために生前に検討できる対策について、一般的な傾向を踏まえながら解説します。
1. 相続で揉める家族の特徴|遺産に関すること
遺産に関して相続で揉める家族の特徴として、特に以下の遺産に関する要因が挙げられます。これらの要因に該当するか否かが、揉めるかどうかの差に大きく影響します。
(1)遺言書の内容が不平等
生前に遺言書を作成することで、遺言書の内容にしたがった遺産相続を実現することができます。
遺言書の内容は、遺言者が自由に決めることができますが、特定の相続人に遺産が偏るなど不平等な内容であった場合には、不満を抱いた他の家族との間で揉める可能性があります。
心理的な観点からは、遺産の配分が不平等であることは、しばしば親の愛情や評価の不平等として受け取られる傾向があります。これは単なる金銭的な問題を超えて、家族の絆や個人の自尊心に深刻な影響を与える可能性があります。
また、遺言書で相続人の「遺留分」を侵害するとトラブルになる可能性もあります。民法では、遺留分制度が設けられており、一定の親族(配偶者、子、直系尊属)には最低限の相続分が保障されているためです。
(2)遺産が実家のみ
遺産が実家しかなく実家に住み続けたい相続人がいる場合、実家を売却することができません。
そのため、特定の相続人が実家を相続することになります。
しかし、それでは他の相続人は遺産を相続することができず、相続人間で不公平が生じてしまいます。
実家を相続した相続人に十分な資力があれば、代償金の支払いをすることもできますが、そうでない場合には1人の相続人が遺産を独占する事態になってしまいます。
(3)遺産に不動産がある
不動産は、現金や預貯金のように簡単に分けることができない財産です。
そのため、誰がどのように相続するかをめぐって意見が対立することが多いです。
また、不動産の評価は、一律ではありませんので、自分に有利な評価方法を主張する相続人同士で意見が対立することもあり、遺産分割方法をめぐってトラブルになる可能性があります。
(4)高額な生前贈与がある
被相続人から高額な生前贈与を受けた相続人がいる場合、遺産の前渡しと評価できます。
そのため、法定相続分どおりに遺産分割を進めると他の相続人から不満が出る可能性があります。
このようなケースでは「特別受益の持ち戻し」により、公平な遺産分割を実現することができます。
しかし、過去の生前贈与になると、いつ、どのくらいの金額が贈与されたかがわからず、家族で揉めてしまうことがあります。
(5)事業承継の問題がある
被相続人が事業をしていた場合、誰が被相続人の事業を継ぐのかで揉めることがあります。
被相続人が生前に後継者を指名して、育成していればよいですが、そうでない場合には、突然事業を継いでくれと言われても困惑してしまいます。
事業承継の問題は、家族経営の中小企業にとって特に重要です。これらの問題を避けるためには、被相続人が生前に対策を講じることが重要です。
(6)被相続人の財産管理を特定の相続人が行っていた
財産管理を行っていた相続人以外は、被相続人の財産状況を正確に把握できていない可能性があります。
これにより、他の相続人から不信感や疑念が生じやすくなります。財産管理を行っていた相続人と他の相続人との間で対立が生じ、円滑な遺産分割協議が困難になる可能性があります。
また、遺産の使い込みを疑われることもあります。
話し合いで解決できないときは、裁判にまで発展する可能性もあります。
2. 相続で揉める家族の特徴|家族関係
家族関係に関して相続で揉める家族の特徴としては、以下の点が挙げられます。これらの要因に当てはまるかどうかが、揉めるか揉めないかに関わり、大きな差を生むことがあります。
(1)被相続人が親族の意見を聞き入れない人だった
被相続人が親族の意見を聞き入れない人だと、相続対策をするよう助言されたとしても素直に従ってくれず、何も対策をすることなく、亡くなってしまうこともあります。
被相続人が「自分のやり方が一番正しい」と考え、周囲の助言を頑なに拒否するのです。
また、自身の死後のことを考えたくないという心理から、相続対策の重要性を理解しようとしない被相続人もいます。
このような状況下では、親族が何度説得を試みても、被相続人が耳を貸さずに時間が過ぎてしまうことがあります。結果として、相続税の負担が必要以上に大きくなったり、遺産分割で親族間の争いが生じたりするなど、様々な問題が顕在化する可能性があります。
(2)もともと親族間の仲が悪い・疎遠
遺産分割は、相続人同士で話し合いをして決めていく必要があります。
親族間の仲が悪いまたは疎遠である場合、遺産分割の話し合いの場を設定すること自体が大きな障壁となります。
また、疎遠な関係により、被相続人の財産状況や最近の意向などの重要な情報が、一部の相続人にしか共有されていないことがあります。この情報格差が、遺産分割協議の場で不信感や対立を生む原因となることがあります。
(3)遺産分割に相続人の親族が口を出す
「相続とは無関係な親族」が遺産分割に関与してくることがあります。
相続人同士の話し合いでも揉めることが多いのに、無関係の親族が関与するとさらに混乱を招く可能性があります。
(4)相続人に認知症や行方不明者、未成年者がいる
遺産分割協議を成立させるには、相続人全員の合意が必要になります。
相続人に認知症の人、行方不明者、未成年者がいる場合、そのままでは遺産分割協議を進めることができません。
認知症の人の場合には成年後見人の選任が、行方不明者の場合には不在者財産管理人や失踪宣告の申立てが、未成年者の場合には特別代理人の選任などの手続きが必要になります。
(5)介護の負担が偏っていた
自分の時間を犠牲にして、時には仕事まで辞めて介護に専念したケースもあるでしょう。そんな人が、ほとんど顔も見せなかった兄弟と同じように遺産を分けろと言われたら「自分だけが苦労して、あいつらは楽をして…」という思いが募るのは当然です。
特定の相続人に介護の負担が偏っている場合、法定相続分による遺産相続では介護の負担を担っていた相続人から不満が出る可能性があります。
このような場合、寄与分を主張することで相続分の修正を行うことができますが、他の相続人が寄与分を認めないと、遺産分割調停や審判に発展することもあります。
家族それぞれの思いや、長年の関係性、そして親への愛情などが複雑に絡み合います。だからこそ、お金の話をする前に、家族でしっかり向き合って話し合うことが大切と言えるでしょう。
(6)被相続人の隠し子など未知の相続人が現れる
遺産相続の手続きを進めようとして戸籍の調査をしていると、家族の知らない隠し子や未知の相続人の存在に気付くことがあります。
このような相続人の存在に気付いても連絡先がわからず話し合いが進められなかったり、連絡先がわかったとしても無視されて話し合いが進められないなどのトラブルが生じる可能性があります。
3. 相続で揉めないためにはどうする?
相続で家族が揉めないためには、以下のような対策が必要になります。
(1)生前から推定相続人全員との話し合い
親が生きているうちに推定相続人全員で将来の相続についてしっかりと話し合いをしておく方が良いでしょう。
そうすると、相続が開始した後もスムーズに遺産分割の手続きを進めることができます。
日常的にコミュニケーションをとっている家族だと、相続で揉めることも少ないです。親族・家族と話す時間を少しずつ取っておくことが大事です。
(2)遺言書を残す
生前の相続対策としてもっとも基本的な方法は、遺言書の作成です。
遺言書を作成することで相続開始後の遺産分割協議が不要になるため、相続人同士の話し合いで揉める心配もありません。認知症、行方不明者、未成年者がいる場合でも、遺言書があれば特別な手続きをしなくても遺産を相続することができます。
ただし、遺言には法律上厳格な要件が定められており、形式・内容に不備があると遺言が無効になるリスクがあります。そのため、遺言書の作成は専門家に相談しながら進めていくとよいでしょう。
(3)成年後見制度の利用
成年後見制度とは、認知症などが原因で判断能力が不十分になった人に代わって、裁判所により選任された後見人が財産管理などを行う制度です。
親が認知症になってしまったときは、成年後見制度を利用すれば、家族による財産の使い込みを防ぐことが可能になります。
なお、成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。自分が信頼できる第三者に財産管理をしてもらいたいという場合には、元気なうちに任意後見制度の利用を検討しましょう。
(4)家族信託の利用
家族信託とは、将来認知症になり財産管理ができなくなることに備えて、信頼できる家族や第三者に財産の管理・処分を任せる制度です。
家族信託を利用すれば、遺言書ではできない二次相続についても財産の行方をコントロールすることができます。
(5)相続が発生する前に専門家に相談
相続で揉める家族の特徴に一つでも当てはまる場合は、将来相続争いが生じる可能性があります。
家族で揉めるリスクを軽減するには、生前の対策が重要になりますので、まずは法律の専門家に相談することをおすすめします。
相続問題に詳しい専門家であれば、具体的な状況に応じたベストな解決方法を提示してもらうことができるはずです。相続争いが生じてからでは遅いので、元気なうちから早めに対策を行っていきましょう。
4. まとめ
今回は、相続で問題が生じやすい家族の特徴や揉める人、揉めない人との差、揉めないために生前に検討できる対策について解説しました。
家族による相続争いは、事前の相続対策により回避可能です。大切な家族が争いに巻き込まれてしまうのを回避するためにも、早めに法律の専門家に相談するようにしましょう。
特に、相続税と贈与税などについては、税理士にご相談ください。
当事務所でも、税理士・弁護士・社労士・司法書士・不動産鑑定士・FP等と連携し、一つの窓口で相続に関する全てをサポートさせて頂いております。お気軽にご相談ください。