コラム
公開日:2020/11/27
更新日:2021/02/22

相続税と申告期限|期限を過ぎるとどうなる?延長はできないの?

今回は、相続税の申告期限はいつまでか?、また、申告期限を過ぎてしまった場合のペナルティや対処方法についてご紹介します。

■関連ページ

相続税申告は自分でできるか?|メリットと注意点を解説

1.相続税の申告期限・納付期限は10か月以内

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は、相続人の死亡日)の翌日から「10か月以内」です。

例えば、12月10日にご家族が亡くなりその事実をその日に知った場合は、翌年の10月10日が申告期限になります。

また、相続税を実際に支払う期限である「納付期限」についても申告期限と同じ日となります。

注意すべき点は、申告期限が土日祝日の場合は「翌日」または「月曜」が申告期限となります。

申告期限は相続発生から300日ではなく、10か月ですので、間違えないように注意しましょう。1日でも申告期限を過ぎるとペナルティが発生します。

2.急ぐ必要あり?相続税の申告期限を間に合わなくなる理由

相続税申告期限まで10か月と聞くと、十分な期間があると感じてしまいます。しかし、次のような理由により申告期限内に相続税申告書を提出することは容易ではありません。

2-1.資料集めが大変

相続税申告書作成では、膨大な量の資料を収集しなければなりません。

本人確認書類ひとつにしても、亡くなった方の「除籍謄本」「改製原戸籍謄本」「住民票の除票」が必要になります。

それに加え、相続人全員の「戸籍謄本」「住民票」「印鑑証明」など多くの資料が必要です。

相続人が平日に役所に行けない場合など、相続人全員の資料を集めるだけでも数か月要することも珍しくありません。また、銀行口座の解約・払い戻しに相続人全員の同意書が必要となるなど、相続に関する書類集めは一筋縄ではいかず、結果的に申告期限を過ぎてしまうケースもあります。

2-2.財産目録を完成させるのが大変

相続税申告では、被相続人(亡くなった方)の「財産を調査」し、財産の価値を計算しなければなりません。

たとえば、被相続人が生前に全財産を記載した「遺言書を残していない場合」などは、相続人が全ての財産の洗い出しを行う必要があり、これには相当な時間を費やします。

また、財産の評価については財産評価基本通達により定められており、相続税申告の経験がない方が一から評価方法を調べて評価額を計算するのにも多くの時間が必要です。

2-3.遺産分割協議がまとまらない

仮に財産目録が完成しても、次に、相続人間で「遺産分割協議」を行わなければなりません。

相続人が1人だけなら問題になることはありませんが、相続人が複数人いる場合は遺産分割協議がまとまらず難航するケースが多くあります。相続税申告では、遺産分割によって相続税額が異なるため、相続税申告期限までに遺産分割を終わらせる必要があります。

たとえ相続人間での話がまとまらない場合でも、申告期限が延長されることはありません。

3.相続税の申告期限の5つの例外

相続税の申告期限は相続が発生して10か月以内です。ただし、次に該当する場合は、例外的に申告期限が異なります。

3-1.相続開始日を知らなかった場合

先述しましたが、相続人が相続開始日(亡くなった日)を知らなかった場合は、申告期限が異なります。

例えば、被相続人と疎遠になっているなどの理由により死亡の事実を後日知った場合は、その事実を知った日から10か月後が相続税の申告期限になります。

3-2.相続開始日が特定できない場合

医療機関以外で最期を迎えた場合、亡くなった日を特定することが難しいことがあります。

例えば、戸籍謄本に死亡日を「令和2年11月10日頃から20日までの間」のように記載されることがあります。この場合、期間中のいつ亡くなったのか確定することができないため、記載されている期間の最終日を相続開始日とみなして申告期限が設定されます。例では、期間の最終日である令和2年11月20日が相続発生日となり、申告期限は令和3年9月20日となります。

3-3.二次相続が発生した場合

相続人が相続税申告期間中に相次いで亡くなった場合は、申告期限が異なります。

「被相続人の相続人」が亡くなった場合、その相続人の相続人(二次相続人)が相続税の申告を行わなければなりません。この場合の申告期限は、相続人が亡くなってから10か月以内になります。

例)
祖父(死亡日:令和1年10月10日)
父(死亡日:令和2年2月20日)
父の相続人は母と子

上記の場合では、祖父の相続人である父が相続税申告書を提出しないまま令和2年2月20日に亡くなっているため、父の相続人である母と子が共同で申告書の提出を行います。

申告期限は、父の亡くなった日から10か月後の令和2年12月20日までに延長されます。

ただし、祖父に配偶者などの他の相続人がいる場合、その相続人の申告期限は延長の対象にならないので注意しましょう。

3-4.相続人以外への遺贈の場合

相続人以外への遺贈の場合、遺贈される方は相続が発生した時点では自分が財産をもらえるかどうか知ることはできません。

この場合、遺言で財産が遺贈されると判明した日の翌日から10か月後が相続税の申告期限になります。

3-5.相続人が廃除された場合

相続人の廃除とは、被相続人に対し「著しい非行」があり、裁判所が相続人に相応しくないと判断した場合に相続人の地位は剥奪されることです。

相続人の廃除により新たに相続人になった場合には、その事実を知った日から10か月後が申告期限になります。

例えば、父の相続人が子1人の場合で、子が裁判所より相続人の廃除が行われると相続の順位が次に移ります。そのため、父の兄弟が法定相続人になり、その場合の父の兄弟の相続税申告期限は、裁判の判決を知ってから10か月以内になります。

4.申告期限を過ぎたら、多くのペナルティがある

相続税申告では、申告期限を1日でも過ぎると厳しいペナルティが課されます。

ペナルティには、加算税などの「罰金」にあたるペナルティと相続税の「特例を利用することができない」ペナルティがあります。

4-1.ペナルティ①罰金

相続税の罰金にあたるペナルティは期限内に「申告が遅れたことへの追徴課税」と「納税が遅れたことへの追徴課税」の2種類があります。罰金の種類と税率は、次の通りです。

①延滞税

延滞税は、期限後に相続税を納付した場合に追加して納付した相続税に対して課税されます。

課税される税率は「年度によって変動」します。

たとえば、令和2年1月1日から令和2年12月31日の場合、「申告期限から2か月以内は年2.8%」「申告期限から2か月経過以降は年9.1%」です。

②過少申告加算税

申告書の税額が実際より過少になっていた場合に発生するペナルティが「過少申告加算税」です。

税務署に指摘される前に自主的に修正申告を行った場合は課税されませんが、税務調査などで指摘され修正申告を提出する場合には課税されます。

税率は「追加で納付した相続税の10%」です。ただし、追加で納付した相続税額が50万円と期限内に申告した相続税額のいずれか少ない方を超える場合には15%が課税されます。

③無申告加算税

無申告加算税は、正当な理由がなく申告期限内に申告しなかった場合に課税されます。「自主的に申告を行った場合は納付した税額の5%」「税務署の指摘により申告を行った場合は納付した税額の15%」が課税されます。

④重加算税

重加算税は、財産の仮装隠ぺいを行った場合に課税される重いペナルティです。「申告書を提出している場合は追加で納付した税額の35%」「申告書を提出していない場合は追加で納付した税額の45%」が課税されます。

4-2.ペナルティ②特例が使えない

相続税申告には様々な特例があります。

この特例を上手に適用することにより相続税額を大幅に軽減することが可能です。

ただし、特例には適用条件があり「申告期限内に申告を行うこと」が条件になっている特例があります。

代表的な特例は「小規模宅地等の特例」と「農地の納税猶予」があります。特に、小規模宅地等の特例は利用しやすく相続税額を大きく軽減することができますので、特例の適用の有無で大きく相続税額が異なります。

【参考記事】

小規模宅地等の特例の計算例・ポイント等をわかりやすく解説

5.相続税の申告期限は延長できる?

相続税申告の申告期限は、原則的に延長することはできません。

ただし、例外的に「遺留分の減殺請求があった場合」や「相続人である胎児が生まれた場合」などは2か月の申告期限の延長が認められます。

また「自然災害等が原因で延長」が認められるケースもあります。

直近では、新型コロナウイルス感染症での個別延長が認められており、税務署へ「災害による申告、納付等の期限延長申請書」の提出もしくは、相続税申告書の余白に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」である旨を付記することで税務署長等が指定した日(やむを得ない理由がやんだ日から2か月以内)まで申告期限を延長することができます。

6.間に合わない場合の救済措置

「申告期限が迫っているのは分かっているけど、どうしても期限に間に合わない」という場合には、次の対処法が考えられます。

6-1.申告期限内に概算申告で申告して納付・還付

財産の調査が間に合わず、相続財産の評価が確定していない場合には、申告期限内に多めの税額になるように概算で申告して相続税額を納付することで延滞税や加算税を回避することが可能です。

財産を確定させた後に還付請求(更正の請求)を行い、多く納税していた相続税額の還付を受けることができます。

ただし、一度申告書を提出すると修正できない事項が多くあります。特に「小規模宅地等の特例」については、利用できなくなる可能性があるため注意が必要です。

6-2.申告期限後3年以内の分割見込書で未分割申告

「財産の評価額の計算は終わっているが遺産分割協議がまとまらず進んでいない場合」には、財産を法定相続分で分割したと仮定して未分割の相続税申告書を作成し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して税務署に期限内に申告をする方法があります。

申告期限後3年以内の分割見込書とは、まだ遺産分割が決まっていない財産については今後3年以内に分割する見込みであるという意思表示です。

後日、遺産分割が確定したら改めて還付請求(更正の請求)または追加納付(修正申告)を行い相続税額の調整を行います。

7.まとめ:茨城県・つくば市の生前贈与・相続税対策は鯨井会計グループへ

今回は「相続税の申告期限と申告期限を過ぎてしまった場合のペナルティ、その対処方法」をご紹介しました。

相続税の申告期限は10か月ありますが、決して十分な時間ではありません。特に、自分で相続税申告を行う方は、しっかりスケジュールを調整して進めていかなければ難しいでしょう。

相続税について不安に思うことや、自分で申告することが難しいと感じた時は、なるべく早く税理士に相談されることをおすすめします。

相続税に強い税理士を選ぶ際のポイントとタイミング

なお当事務所「鯨井会計」では、茨城県つくば市を中心として、相続対策の立案・実行支援サービスを実施しております。

相続税に関するセミナーも頻繁に行い、相続税に関するご依頼も数多くお受けしております。

  • 葬儀後、何から手を付けて良いかわからない。
  • 預貯金の解約手続き、不動産の名義変更をどのように行ったらよいか分からない。
  • 相続税申告が必要かどうかわからない。
  • どの様な財産に対して税金がかかってくるのかわからない

等、少しでも相続について不安な方、最寄りにお住まいの方は、ぜひ当事務所にご依頼ください。