コラム
公開日:2020/04/02
更新日:2020/07/02

孫への生前贈与のやり方・7つの注意点をわかりやすく解説

  • 孫への生前贈与って、相続税対策になるの?
  • 孫への贈与っていくらまで非課税なの?贈与時に注意点ってないの?
  • 教育資金贈与や相続時精算課税制度ってお得なの?

財産を持っている人ほど多くの相続税の納税が必要になります。そこで重要になるのが生前贈与を利用した相続税の節税対策です。

特に、孫への生前贈与は子への生前贈与より効果的です。今回は、孫へ生前贈与による相続税の節税対策のやり方やその注意点をご紹介します。

目次

1.孫への生前贈与のメリット|3年以内贈与財産の加算は基本的に対象外

孫に生前贈与する大きなメリットは、「3年以内贈与財産の加算」の対象外となることです。

「3年以内贈与財産の加算」とは、生前贈与を行って「3年以内」に贈与者が亡くなっった場合、生前贈与した財産が相続税の計算に加えられることを言います。

つまり、相続税の計算上は、その生前贈与は無かったことになるのです。

例えば、被相続人(亡くなった人)が亡くなる5年前から毎年100万円を子に生前贈与していた場合(合計500万円の贈与の場合)、5年間のうち3年間の贈与(つまり300万円)が無かったこととして、相続税の計算が行われます。

しかし、孫に生前贈与した場合は、原則この3年以内贈与財産の加算の対象外になります。

上記のケースの場合、合計500万円の財産が相続税に加算されずに移転することができます。

なお、後述しますが、例外的に3年以内贈与財産の加算対象外にならないケースも存在するのでご注意ください。

2.贈与税の課税方式と非課税枠をわかりやすく解説!

生前贈与の注意点の前に、基本的な贈与税の課税方式について解説致します。生前贈与には2種類の課税制度があり、1つは暦年課税制度(一般贈与)、2つ目は相続時精算課税制度と言います。一般的には、孫への生前贈与には暦年課税制度を選択します。

2-1.暦年課税制度による孫へ110万円の贈与が最も節税効果が高い

暦年課税とは、その年の1年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与に対して課税される制度です。

この暦年課税制度には、基礎控除が設定されており、年間110万円までの贈与については、非課税になります。

つまり、孫に年間110万円以内の贈与を行うことで、贈与税が課税されることなく財産を移転することができます。

注意点は、下記の通りです。

  • 贈与税の申告は、贈与した人ではなく贈与を受けた人が申告
  • 110万円の非課税限度額については、贈与者1人あたり年間110万円ではなく、贈与を受けた側の合計贈与額が対象

例えば、祖父と祖母がそれぞれ年間110万円を孫に生前贈与を行った場合は、孫は合計220万円の贈与を受けることになります。

つまり非課税限度額110万円を超えるため、この場合、贈与を受けた孫が申告と納税を行う必要があります。

2-2. 贈与税の計算方法

贈与税の申告が必要になる場合、以下の計算式で贈与税額の算出を行います。

(年間に贈与を受けた金額-基礎控除額110万円)×「贈与税率」-「控除額」=贈与税額

「贈与税率」は、2種類存在し、1つは一般贈与財産用、もう1つは特例贈与財産用です。それぞれの税率は、次のとおりです。

孫が20歳未満の場合|一般贈与財産

祖父母が孫に生前贈与を行う場合は、孫の年齢がその年の1月1日時点で20歳未満の場合は一般贈与財産用の税率で贈与税の計算を行います。

【一般贈与財産用(孫が20歳未満の場合)】

110万円を差引いた後の受贈金額(課税価格) 贈与税率 控除額
200万円以下 10% なし
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

孫が20歳以上の場合|特例贈与財産用

祖父母が孫に生前贈与を行う場合は、孫の年齢がその年の1月1日時点で20歳以上であれば特例贈与財産用の税率で贈与税の計算を行います。

【特例贈与財産用(孫が20歳以上の場合)】

110万円を差引いた後の受贈金額(課税価格) 贈与税率 控除額
200万円以下 10% なし
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

2-2.もう一つの課税方式:相続時精算課税制度とは

暦年課税制度のほかに、相続時精算課税制度という課税方式がありますが、こちらは2,500万円までの生前贈与については贈与税がかからない制度です。

一見、節税対策に有効な制度に見えますが、この制度を利用して贈与した財産は「相続時に財産に加算」されます。つまり、相続時精算課税制度には、基本的に相続税の節税効果はありません。

また、相続時精算課税制度を利用するには選択届出書を税務署に提出する必要があります。失念してしまうと、暦年課税制度により贈与税の計算が行われ、多くの贈与税が発生するおそれがあるため手続きには、十分注意が必要です。

3.孫への生前贈与の7つの注意点

ここまでご紹介してきたとおり、孫への生前贈与は、将来の相続税対策にとても効果的です。しかし、孫への生前贈与をする場合に注意しなければならないこともいくつかあります。ここでは、孫への生前贈与の注意事項をご紹介します。

3-1.3年以内贈与財産の加算の対象になる場合があるので注意!

冒頭で孫への生前贈与は3年以内贈与財産の加算の対象外とご紹介しましたが、例外的に3年以内贈与財産の加算の対象になる場合があります。対象になる場合は、以下のケースです。

① 孫が祖父母の法廷相続人になる場合

孫が祖父母の「法廷相続人」に該当することになった場合は、3年以内贈与財産の加算の対象になります。

例えば、祖父母が孫と養子縁組した場合(孫養子)は、孫を子として取り扱うため3年以内贈与財産の加算の対象となります。

また、祖父母の相続前に子(孫の父母)が亡くなっている場合は、孫が子(孫の父母)の代襲相続を行うため3年以内贈与財産の加算の対象となります。

② 遺言書に孫が財産を受け取ることが明記されている場合

遺言書に孫に財産を相続させる旨の記載がある場合は、孫は法定相続人と同様の取り扱いになり、3年以内贈与財産の加算の対象となります。

遺言については、下記ページも併せてご参考ください。
■参考ページ
自筆証書遺言の書き方・ポイント・注意点【2020年版】

③ 生命保険の受取人が孫になっている場合

被相続人(祖父母)の死亡保険金の受取人が孫になっている場合は、法定相続人と同様の取り扱いになり、3年以内贈与財産の加算の対象となります。

3-2.幼児へ贈与する場合は注意!

祖父母から意思表示ができない幼児への生前贈与を行いたいケースも多いです。

民法では、未成年への贈与について「親権者が財産をもらいます」という意思表示をすることで贈与契約が成立します。つまり、祖父母が未成年の孫へ生前贈与を行う際は、孫の親(祖父母の子)が親権者として贈与契約を結ぶことになります。

ただし、未成年者への贈与については「税務署の調査」等でしばしば問題になります。調査では、孫への贈与の実態はなく、祖父母が孫の名義で預金しているだけではないかと疑われることがあるのです。疑われないためには、次の事項に注意する必要があります。

① 贈与契約書を作成する

贈与があったことの証拠を残すためにも贈与契約書を毎回作成しましょう。贈与契約書には孫の親権者(親)の署名押印が必要です。

② 財産の管理が重要

孫が幼児の場合、祖父母から贈与された財産を自分の意志で使用することは不可能です。

贈与された財産は、親権者である孫の親が行うことになります。ここで重要なことは親権者が贈与された財産を私的に使用してはいけないことです。もし、親権者が贈与された財産を私的に使用している場合は、祖父母から親権者(孫の親)への贈与とみなされるおそれがあります。

3-3.毎年同じ時期に同じ金額を贈与するのは危険

毎年贈与を行うことを連年贈与と言います。連年贈与自体は特別珍しいものではなく、税務上、問題ではありません。

しかし、「定期贈与」と認定された場合、一定の期間の贈与額の合計額について贈与税が課税されることになります。

例えば、毎年100万円を5年間で孫に生前贈与すると決めている場合でも、総額500万円に贈与税が課税される可能性もあるのです。生前贈与をする時期を変える(毎年、決まった日に贈与しない)、生前贈与額を毎年変更しておくと、定期贈与と認定されにくくなります。

3-4.孫の学費や生活費は、贈与税の対象にならない

孫の「学費」や「生活費」を祖父母が負担した場合は、贈与税の対象になりません。

ここでいう「生活費」とは、食費・家賃、疾病にかかった場合の治療費などが該当し、「学費」とは、学校や塾の学費・交通費などが該当します。

贈与税について定められている相続税法には、扶養義務者間の生活費、教育費の贈与には贈与税が課税されないと定められています。

特にここでのポイントは、支出した金銭が社会通念上妥当な金額かということです。

孫へ支出した生活費などが社会通念上、あまりにも高額な場合(例えば一括で1500万円送金する等)は贈与とみなされるおそれがあります。しかしながら、人によって生活コストに違いがあるため、一概にいくらまでとは決められていません。

3-5.1500万円まで非課税!教育資金の一括贈与の特例の注意点

先述したとおり、祖父母が孫の学費をその都度負担する場合は、一度に大金を贈与することはできません。

例えば、1歳の孫に将来の大学費用のことを考えて1500万円を渡すと、そのお金は贈与となり贈与税が課税されます。

しかし「教育資金の一括贈与の特例」を利用することで、一度に多額の贈与をした場合でも、1500万円の贈与まで非課税にすることが可能です。適用条件は、以下のとおりです。

  • 2021年3月31日までの贈与であること(延長される可能性があります)
  • 孫の年齢が30歳未満であること
  • 金融機関で専用の口座を開設すること

①教育資金一括贈与の特例のメリット・デメリット

また、1500万円の教育資金一括贈与の非課税制度(教育資金一括贈与の特例)は、メリットだけではなく注意点もありますので注意が必要です。メリットは下記のとおりです。

  • 多額の現金を一度に贈与することができる
  • 相続税の3年以内加算の対象外
  • 暦年贈与との併用が可能

なお、下記のような注意点があります。

  • 孫が30歳になるまでに贈与された資金を使い切らなければ贈与税が課税される
  • 孫が30歳になるまでに祖父母が亡くなった場合、使いきれなかった資金は相続財産になる
  • 教育資金として使用したことが分かる領収書などを金融機関に提出しなければならない

最大1500万円の多額の資金を非課税で生前贈与することができる「教育資金一括贈与の特例」ですが、使いきれなかった場合や、贈与者が亡くなった場合に思わぬ税金の支払いが発生する可能性があるので利用する際には注意が必要です。

3-6.孫の学資保険の支払いをする場合は受取人に注意!

将来の孫の学費のために前々から学資保険に加入するケースも少なくありません。

この場合、学資保険の受取人に注意する必要があります。

まず、祖父母が学資保険の契約者になる場合は、親権者(孫の親)の同意が必要になる場合があります。学資保険の契約では、孫を被保険者として契約しますが、受取人を誰にするかで贈与税が課税されるおそれがあります。

学資保険の契約形態によって、次の税金が課税される可能性があります。

契約者 被保険者 受取人 課税される税金
祖父母 祖父母 所得税(一時所得)
祖父母 贈与税(孫)
祖父母 親権者(孫の親) 贈与税(孫の親)

3-7.孫への生前贈与は特別受益にはならない

特定受益とは、特定の相続人が生前贈与などの方法で特別に受けた利益のことを言います。

孫への生前贈与は、原則的に特別受益に該当しません。ただし、いくつかの例外があります。

①孫と養子縁組を行っている場合

祖父母が孫と養子縁組を行っている場合、つまり孫が子でもある場合は、孫が法定相続人に該当するため特別受益に該当する可能性があります。

②孫の親権者(親)が扶養義務を履行していない場合

孫の親権者(親)が、子(孫)の面倒を見ず、祖父母が孫の面倒を見ている場合は、祖父母が扶養義務者となります。

通常の教育費や生活費を超える金銭を孫に贈与している場合は、特別受益に該当する可能性があります。

③実態が孫の親権者(親)への生前贈与の場合

祖父母から孫名義の口座預金に振り込んでいるが、実体は孫の親権者(親)への生前贈与の場合は特別受益に該当する可能性があります。

4. まとめ:茨城県・つくば市の生前贈与・相続税対策は鯨井会計グループへ

今回は、孫への生前贈与のやり方や注意点をご紹介しました。

贈与税の基礎控除(年間110万円の非課税枠)を利用した孫への生前贈与は、将来の相続税対策にとても効果的です。

相続税対策を考えられている方は、相続税の専門家である税理士にご相談されることをおすすめします。

なお当事務所「鯨井会計」では、茨城県つくば市を中心として、相続対策の立案・実行支援サービスを実施しております。

相続税に関するセミナーも頻繁に行い、相続税に関する相談も年100件以上頂いております。

  • 葬儀後、何から手を付けて良いかわからない。
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  • どの様な財産に対して税金がかかってくるのかわからない

等、少しでも相続について不安なお気持ちがある場合は、ぜひ一度当事務所にお気軽にご相談ください。