コラム
公開日:2022/10/11
更新日:2022/10/11

投資信託と相続|亡くなったら引き継ぎ可能?名義変更の方法など解説

亡くなった被相続人が保有していた投資信託の受益権は、相続によって相続人に承継されます。

投資信託の相続については、手続きや税金などに関して多くの注意点がありますので、弁護士や税理士などの専門家にご相談ください。当事務所でも投資信託と相続に関するアドバイスを手掛けており承ります。お気軽にご相談ください。

今回は投資信託の相続について、手続きの流れや死亡後放置したらどうなるか、注意点などを解説します。

1. 亡くなった被相続人の投資信託は、遺産分割の対象

投資信託の受益権は口数によって細分化されているため、額面で分けることのできる「可分債権」に当たります。

複数の相続人が存在する場合、被相続人が有した可分債権は、遺産分割を経ることなく法律上当然に分割承継されるのが原則です(最高裁昭和29年4月8日判決)。しかし投資信託については、例外的に当然分割が行われず、遺産分割の対象となります。

1-1. 投資信託は当然分割されない|遺産分割の対象となる

投資信託が当然分割されず、遺産分割の対象となることを示したのは、最高裁平成26年12月25日判決です。

同判決では、投資信託の受益権が当然分割されない理由として、以下の2点を挙げています。

  • ①口数を単位としており、1口未満での権利行使は認められない
  • ②金銭支払請求権だけでなく、委託者に対する監督的機能を有する帳簿書類の閲覧・謄写の請求権など、可分給付を目的とする権利でないものが含まれている

したがって投資信託の受益権は、遺言書で相続する者が指定されている場合を除き、遺産分割によって相続する者を決定します。

1-2. 投資信託を遺産分割せずに放置したらどうなる?

投資信託を遺産分割せずに放置すると、すべての相続人が準共有(民法264条)する状態が維持されます。

準共有状態の投資信託は、売却する際にすべての準共有者の同意が必要です(民法251条)。また、死亡した被相続人の口座からの移管が済んでいなければ、そもそも投資信託を売却することができません。

遺産分割が済んでいないことによって売却に制約が生じると、投資信託の売り時を逃してしまう可能性があります。このような事態を避けるためにも、投資信託の遺産分割は、他の遺産と併せて放置せず早めに行っておくことをお勧めいたします。

2. 投資信託の相続手続きの流れ

投資信託を相続するには、金融機関に連絡をして、被相続人口座から相続人口座へ投資信託を移管してもらう必要があります。
投資信託の相続手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。

2-1. 金融機関に被相続人の死亡を連絡する

まずは、投資信託の保有口座がある金融機関(信託銀行・証券会社など)に対して、被相続人が死亡した旨を連絡します。
どこの金融機関に投資信託の口座があるかわからない場合は、被相続人の遺品の中に、金融機関から送付される運用報告書や取引残高報告書がないかを確認しましょう。

金融機関に被相続人の死亡を連絡すると、被相続人名義の口座は凍結され、取引や入出金が停止されます。

なお、遺産分割を行うに当たっては、投資信託の残高を把握する必要がありますので、金融機関に残高証明書を発行してもらいましょう。

2-2. 投資信託の分割方法を確定する

金融機関に相続手続きを申請する前に、投資信託の分割方法を確定する必要があります。

遺言書が残されており、その中で投資信託の分割方法が指定されている場合には、原則として遺言書の内容どおりに投資信託を分割します。ただし、相続人・受遺者全員が合意すれば、遺言書とは異なる方法により投資信託を分割することも可能です。

遺言書がない場合や、遺言書があっても投資信託の分割方法が指定されていない場合には、相続人・包括受遺者が協議を行い、投資信託の分割方法を取り決めます。
協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を通じて解決を図ることになります。

投資信託は、相続手続きが完了すれば比較的短期間で現金化できるのが特徴です。そのため、生活費や不動産の新規取得、相続税の納税などによって現金を必要としている相続人が、投資信託の相続を希望する傾向にあります。

2-3. 金融機関に必要書類を提出する

投資信託の遺産分割方法が確定したら、投資信託の保有口座がある金融機関に対して相続手続きを申請しましょう。

金融機関における相続手続きの必要書類は、おおむね以下のとおりです。

①遺言書がある場合

(a)遺言執行者がいる場合
・遺言書
・検認調書(公正証書遺言、法務局の遺言書保管所で保管されている自筆証書遺言については不要)
・法定相続情報一覧図の写し、または被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
・遺言執行者の印鑑登録証明書

(b)遺言執行者がいない場合
・遺言書
・検認調書(公正証書遺言、法務局の遺言書保管所で保管されている自筆証書遺言については不要)
・法定相続情報一覧図の写し、または被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
・投資信託を相続する者の印鑑登録証明書

②遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合

(a)法定相続情報一覧図の写しを取得している場合
・遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印が必要)
・法定相続情報一覧図の写し
・相続人全員の印鑑登録証明書

(b)法定相続情報一覧図の写しを取得していない場合
・遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印が必要)
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人と相続人の続柄が確認できる戸籍謄本
・相続人全員の印鑑登録証明書

③遺言書がなく、遺産分割協議書もない場合

※調停調書・審判書がある場合は、それを添付
(a)法定相続情報一覧図の写しを取得している場合
・法定相続情報一覧図の写し
・相続人全員の印鑑登録証明書

(b)法定相続情報一覧図の写しを取得していない場合
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人と相続人の続柄が確認できる戸籍謄本
・相続人全員の印鑑登録証明書

2-4. 口座を準備・投資信託の移管

金融機関の相続手続きでは、被相続人口座の投資信託は、相続人の口座へと移管されます。

もし相続人が当該金融機関に口座を持っていなければ、新規に口座を開設しなければなりません。

担当者の指示に従い、口座開設書類を作成・提出しましょう。

金融機関側での審査が完了すれば、投資信託の移管が行われます。

移管の完了後、相続人は投資信託を自由に売却できるようになります。

3. 投資信託を相続する際の注意点

投資信託を相続する際には、価格変動や売却時の課税、相続税評価などに注意しなければなりません。

3-1. 投資信託の基準価額は変動する|時点によって価値が異なる

投資信託の価値は、金融機関が毎日1回決定する「基準価額」によって決まります。

基準価額は日々変動するため、相続発生時・遺産分割時・移管時・売却時など、時点によって価値が異なります。

遺産分割時には基準価額が高かったのに、売却時には暴落していたなどの事態が生じる可能性もあるのでご注意ください。

3-2. 投資信託を現金化してから分割可能?税金は?

被相続人口座は、死亡によって凍結されています。したがって、被相続人口座にある投資信託を売却して、金銭による分配を求めることはできません。

相続人が投資信託を売却して現金化できるのは、金融機関における相続手続きが終わった後、つまり相続人口座へ「投資信託が移管されてから」です。

投資信託を現金化してから分けたい場合には(換価分割)、代表の相続人が口座を開設して投資信託の移管を受け、売却により得た現金を分割する方法が考えられます。

ただしその際、取得価格よりも高額で売却した場合には、売却益に対して20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかる点に注意が必要です。

遺産分割前の売却にかかる税金は相続財産の負担となりますので、どのように相続人間で分担するかを取り決めておきましょう。

3-3. 投資信託の相続税評価について

投資信託を含めた相続財産等が高額の場合は、相続税の申告・納付を要する可能性があります。

具体的には、相続財産等の総額が基礎控除額*を超える場合などには、相続税の申告・納付が必要です。

*基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数。なお、相続税評価の基準時は、被相続人の死亡日。

そのため、投資信託についても、その価値を相続財産等の金額に算入して相続税を計算します。

投資信託の価値は日々変動しますが、被相続人の死亡日の基準価額を用いて相続税評価額を計算するものとご理解ください。

4. まとめ

投資信託の相続については、金融商品としての性質上、他の財産とは異なる注意点が存在します。

投資信託に関する相続手続きをスムーズに終えるためには、ぜひ法律の専門家へのご相談をご検討ください。

当事務所でも投資信託に関する相続のアドバイスを手掛けており承ります。お気軽にご相談ください。