コラム
公開日:2020/08/04
更新日:2020/08/04

生前贈与と相続はどちらがお得?相続税と贈与税の違い

次の世代へ財産を残す方法は、「生前贈与」と「相続」があります。

この2つの方法はどちらも財産を移転させる点では同じですが、課税される税金は贈与税と相続税で異なります。

この際に、下記のような疑問を感じる方も多いでしょう。

・生前贈与と相続ってどちらが得なの?

・相続税と贈与税ってどちらが高いの?安いの?

・土地や家も生前贈与したほうが良いの?

そこで今回は、生前贈与と相続の制度の違いについてご紹介します。

1.生前贈与と相続はどっちが得?どう違うの?

「生前贈与」は財産を渡す人が生きている間に財産を贈ることを言い、「相続」は財産を渡す人が亡くなった後に、財産を相続人が引き継ぐという違いがあります。

そして、生前贈与をした際は場合によって「贈与税」という税金を納め、相続をする際には「相続税」という税金を納めることになる場合があります。

1-1. 生前贈与は相続税対策に有効

生前贈与に課税される贈与税には「基礎控除」と言われる非課税枠が存在するため、相続税対策には生前贈与が有効です。

基礎控除は、財産をもらう人1人あたり年間110万円が設定されています。つまり、年間110万円以内の贈与については贈与税が課税されません。

「110万円だけじゃ少ない」と思われる方もいると思いますが、塵も積もれば山となります。

例えば、父親が3人の子供に1人あたり110万円の贈与を「10年間」行った場合はどうでしょうか。

110万円×3人×10年間=3,300万円になり、総額3,300万円分の財産について贈与税を払うことなく移転することになります。

もちろん、移転した財産には相続税が課税されることはありません。

ただし、長い期間をかけて贈与しなければ効果が薄いため、早めから相続税対策を考える必要があります。

2.生前贈与の税率は相続税より高いけどお得

贈与税の非課税枠年間110万円を利用した生前贈与は、最も効果的な相続税対策です。

では、年間の贈与額が非課税枠の「110万円を超えた生前贈与の場合」は相続税対策になるのでしょうか。贈与税率と相続税率を比較してみましょう。

2-2.贈与税率(特例税率:20歳以上の子や孫への贈与)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

2-2.相続税率

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

一目瞭然ですが、贈与税率の方が相続税率に比べて税率が高く設定されています。

「これでは、生前贈与せずに相続で財産を渡した方が少ない税負担で済むのでは?」と思われるかもしれませんが、単純に税率だけでは比べることができません。

なぜなら、相続税は亡くなった時に全ての財産を一度に渡すことになりますが、生前贈与では全ての財産を一度に渡すことは滅多にないからです。

2-3.相続税と贈与税の比較|具体的な計算と金額

具体例をあげて見ていきましょう。下記条件で「生前贈与を行わなかった場合」と「生前贈与を行った場合」の税金の金額を計算します。

■具体例

・被相続人の総財産1億5,000万円(便宜上、全て金銭債権として計算)

・相続人:子2人

・遺産分割は法定相続分によって行う

パターン①生前贈与を行わなかった場合

■課税遺産総額

・1億5,000万円-基礎控除4,200万円=1億800万円

■相続税の総額

・1億800万円×法定相続分1/2=5,400万円

・5,400万円×相続税率30%-控除額700万円=920万円(子1人あたりの相続税額)

・相続人は子2人なので、920万円×2人=1,840万円

つまり、上記の条件の場合、生前贈与を行わない相続税額合計は「1,840万円」になります。

パターン②子2人に1,000万円ずつ生前贈与した場合

■生前贈与の贈与税の計算

・(贈与額1,000万円-基礎控除110万円)×贈与税率30%-控除額90万円=贈与税額177万円

・2人分のため177万円×2人=354万円

■相続税の計算

・課税遺産総額1億5,000万円-(生前贈与1,000万円×2人)-基礎控除4,200万円=8,800万円

・8,800万円×法定相続分1/2=4,400万円

・4,400万円×相続税率20%-控除額200万円=680万円(子1人あたりの相続税額)

・相続人は子2人なので、680万円×2人=1,360万円

■合計

・贈与税354万円+相続税1,360万円=1,714万円

つまり、上記条件の場合、生前贈与を行ったケースでの相続税額合計は「1,714万円」になります。

生前贈与を行わなかった場合(パターン①)と生前贈与を2人の子に1,000万円ずつ行った場合(パターン②)を比較すると、生前贈与を行った場合の方が「126万円少ない税額」で済み、お得であることが分かります(1,840万円-1,714万円)

特に、財産が多くある人(相続税率が高くなる人)ほど、生前贈与は有効な相続税対策になります。

早めから行うことで何年間も継続的に行うことができ、より効果的な節税効果を期待できます。

3.生前贈与をする際の注意点

通常は、生前贈与を行うことで将来の相続税を減少させることができますが、生前贈与を行わない方が有利になるケースも存在します。

ケース①財産が相続税の基礎控除未満の場合

財産が相続税の基礎控除未満(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の場合は、そもそも相続税が発生しないため生前贈与の必要がありません。

贈与税の非課税枠(110万円)を超えて生前贈与すると贈与税が課税されるため不利になります。

ケース②3年以内生前贈与加算には注意

相続税対策のもう一つの注意点として「生前贈与加算」があります。

それは「相続発生日(死亡日)から遡って3年以内」に行った生前贈与は相続財産に加算されることです。

支払った贈与税については相続税から控除することになり、実質的に「生前贈与がなかったもの」として取り扱われることになります。

特に配偶者や子などへの生前贈与は「亡くなる日から3年以内の生前贈与は無効になる」ことを留意することが大切です。

なお、一般的に、法定相続人ではない孫への生前贈与は3年以内生前贈与加算から除外される場合が多いですが、孫が代襲相続する場合や遺言書によって相続財産を受け取る場合や生命保険金の受取人になっている場合は孫であっても3年以内生前贈与加算の対象になるため注意が必要です。

以上のことから、財産を譲る人の死期が迫っている場合に生前贈与を行っても、3年以内生前贈与加算により生前贈与がなかったことになってしまうため意味がありません。

また、亡くなる直前の不自然な生前贈与は、他の相続人との遺留分を巡ってのトラブルになる可能性があるので注意をしましょう。

ケース③土地・不動産の生前贈与は慎重に

金銭や有価証券など換金性の高い財産を生前贈与することは比較的安易にできますが、土地・不動産など換金することが難しく、価値が高額な財産を生前贈与する際は慎重に行う必要があります。

例えば、土地を生前贈与する場合には「110万円分の土地だけ贈与する」ことは不可能であり、土地一筆を贈与する必要があります。そのため、高額な贈与税が発生するおそれがあります。

土地の持分を少しずつ何年間かにわたって贈与する方法もありますが、司法書士へ支払う持分登記費用や税理士へ支払う贈与税申告書作成費用などの経費が発生します。

これらの経費を考慮し、持分を少しずつ贈与した方が税の負担が少なくて済むかどうか検討した方がいいでしょう。

また、相続により不動産を取得した場合、不動産取得税は課税されませんが、生前贈与により不動産を取得した場合は不動産取得税が課税されることに留意しましょう。

4.家・住宅の取得資金を生前贈与すべきか

4-1. 住宅取得等資金の非課税の特例のメリット

贈与税について、下記のような悩みを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

家を買うときに親に援助してもらうと贈与税の税率が高いので、援助して貰う場合は親名義にして、後で家を相続をするほうがいいのでしょうか?

この場合、知っておくべき制度として「住宅取得等資金の非課税の特例」があります。

この制度は、子や孫へ住宅購入費用を援助する時に、一定額まで「贈与税が非課税」になる制度です。

贈与税非課税枠の限度額は、最大で3,000万円に贈与税の基礎控除額110万円を加えた3,110万円です。

購入する住宅の契約日、省エネ等住宅かどうか、住宅に消費税が課税されているかどうかで贈与税非課税枠が異なります。

この制度は、3年以内生前贈与加算の対象にならず、相続税対策にとても効果的なため、多くの人が利用している特例です。

ただし、全ての方が住宅取得等資金の非課税の特例を利用した方が有効とは限りません。住宅取得等資金の非課税の特例の注意点は2点あります。

4-2.注意点①小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性がある

「小規模宅地等の特例」とは、相続税を計算する際に土地の評価額を330㎡まで80%減額することができるとても重要な特例です。

例えば、土地の評価額が2億円の場合、80%減額され4,000万円になり、相続税が大きく軽減されます。

住宅取得等資金の非課税の特例を利用することで、この小規模宅地等の特例が使えなくなる可能性があります。

理由は、小規模宅地等の特例の適用条件が「亡くなった人の配偶者や同居の親族であること」となっており、配偶者や同居親族がいない場合には「亡くなった人と別居しており、3年以上自分の持家に住んでいない親族」が対象になるためです。

つまり、亡くなった人に配偶者や同居親族がいない場合で、別居の子に住宅取得等資金の非課税の特例により自宅を持たせてしまうと小規模宅地等の特例が利用できなくなってしまいます。

4-3.注意点②贈与税申告書を必ず提出する

住宅取得等資金の非課税の特例を利用する場合は「贈与税額が発生しない場合」でも「贈与税申告書」を必ず提出しましょう。

提出期限より1日でも遅れてしまうと特例が利用できず、通常の贈与税が課税されてしまうことになります。

5. まとめ:茨城県・つくば・下妻周辺の生前贈与・相続税対策は鯨井会計グループへ

今回は生前贈与と相続はどちらが安くなるか高くなるか、また相続税と贈与税の違いについて解説して参りました。

生前贈与を上手に利用することができれば、相続税を抑えることができることが分かります。

なお、当事務所「鯨井会計」では、茨城県つくば市を中心として、相続対策の立案・実行支援サービスを実施しております。

相続税・家族信託に関するセミナーも頻繁に行い、相続税に関する相談も年100件以上頂いております。

  • 葬儀後、何から手を付けて良いかわからない。
  • 預貯金の解約手続き、不動産の名義変更をどのように行ったらよいか分からない。
  • 相続税申告が必要かどうかわからない。
  • どの様な財産に対して税金がかかってくるのかわからない

等、少しでも相続について不安なお気持ちがある場合は、ぜひ一度当事務所にお気軽にご相談ください。