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| 2001.7.27 |
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再生の基本戦略 (「中小企業の再生ビジネス戦略」より) |
2 中小企業の事業承継対策
企業再生を考え後継者を選定するには、後継者候補の経営者としての適性を中心に考えてゆかねばならないが、何が適性であるのか具体的に考えると特に重要なものとして次の項目が考えられよう。
◆ 1 経営に興味を持つ人
継承候補者に最も重視しなくてはならないことは経営そのものに強い関心をもっていることである。いくら事業センスに秀でていても、経営の要素である販売・財務・労務・管理開発部門を活性化させなければ企業の経営は存続できない。企業業績を上げるには経営そのものに没頭し社員が目標に向かって一丸となるようにリーダーシップを発揮しなければならない。
経営者が経営に興味が少なく、経営以外の専門分野に強い関心を持っている場合は企業の目標達成のパワーが減少し、組織としても纏まりがなくなり時代対応の出来ない企業となる。企業業績は困難な事柄、難しい事柄に挑戦して初めて確保出来ることから考えても後継者としては不適任であるといえる。
◆ 2 誰からも認められる立場にある人
中小企業の経営者の場合、企業としての信用力・組織力よりも、経営者個人の信用力、及び仕事の処理能力が重視される。金融機関は企業の業績収益もあるが保証能力を重視する。また経営者個人及び家族の保証・担保抵当で資金を調達して経営が行われている。
外部資金の調達はいきおい経営者の資産保有高で左右されてくる。従って中小企業の経営者の後継者は資本金の規模によっても異なるが社長の息子、または縁者が9割近く事業を承継しているのが現状である。他人が事業承継をする場合は人望があり、社内外から当然の人事と評価される社員を抜擢しない場合、社内が分裂し企業崩壊が生じるケースが多発している。
◆ 3 徳があり性格的に人に好まれる人
中小企業の経営者は毎日社員と接し、社員の家族とも対話することが多い。逆に、毎日社員及びその家族や地域社会から経営者の行動は監視されている。従って経営者の行為行動、人間性など人の目の中で四六時中生活をしている状態である。特に人間性として明るい陽気な性格で近づき易い人か、言葉遣いや態度に人を見下す感じがないか、感謝の気持ちがあるか、我慢抑制ができるかどうかは重要な要素である。
その上で人をひきつける人間として魅力があるか、嫌いな人に対しても好きな人と同じ表情・態度・言葉遣いで接することが出来るか否か、人の痛みや苦しみが分かるか否かは多くの人が人間的魅力を強く感ずるところである。これらの危容力を持つ後継者であれば多くの社員及び取引先からの信頼は強いものになる。
◆ 4 勇気をもって決断できる人
中小企業は経営者の身近に人がいて、日々の触れ合いができる距離で仕事をしている。社員はたえず経営者の行動を目の辺りにしている。
生産性も経営者の指示命令によって大きく異なってくる。中小企業の生産性は、組織が未成熟で各個人に近い状態で目標設定をしないと成果はなかなか上がってこない。組織で仕事をするという感覚に馴らされていないためでもある。経営者たるリーダーにまず求められることは、良いと思ったらすぐ実行する決断力があるかどうかが重要な点である。高等教育を受け経営学を学び素晴らしい経営システムを知っていても自分で行動しなくては社員の理解は得られない。部下を一喝できる勇気があるかどうかも大切である。特に後継者にあたる若年層の世代に、身近にいる人の問題行動に対して見て見ぬふりをする世代が多い。企業目標に社員の力を集中させるには問題点の指摘を時機を違えず行うことは重要であり、時には一喝による個人行動の制約も必要である。組織の運営は時には強制力も伴うものである。更に経営者として行動する場合は細心の注意をすることは、断るべきことを断れるかという問題である。
中小企業は人が仕事をする部分が強いため、個人としての人の触れ合いと仕事をする場合の人の触れ合いが重なってしまい、仕事として断るべきときに断るタイミングを失い、会社に損害を与えるケースが見られ、社員からの信頼を失うことになる。更に悪いことは自分のメンツにこだわる言い訳をしてしまうと社員が経営者の指示に対し面従腹背の状態になる。
◆ 5 組織人としてルールを守る人
中小企業の経営者に多く目につくことは、社員を支配し従属させていると考えて自分の思う通りに働かそうと考える点である。また自分は経営者であるから、自分の行動は職場の規制や慣習を守らなくて良いと考えているケースも多く目にする。勤務時間にプライベートのゴルフ参加や、後継者の青年会議所参加、翌日の遅刻などはよく目につくケースである。
組織人としてルールを逸脱することでは社員の労働意欲を無くさせ、経営者としての責任感や社会性の欠如が問われる。不真面目は人間的な信頼を無くすと共に社風にも不真面目さが出てしまう。また他人の気持ちや立場を考えずに、自分勝手な言葉遣いや行動をとることは無いだろうか。組織化をしてゆく上で部下には報告復命を求めてゆくが、自分では部下に対して報告すべきことを報告していないケースは無いだろうか。経営者にとって部下の教育が一番大切な事柄であるにもかかわらず、信頼を受ける組織の根本を壊す行為行動をしていることになる。創業者は独断も許されるが、後継者には組織人たることが求められるのである。
特に後継者が経営者の息子の場合、子供の頃から今日までその成長を見て来た古参幹部にとっては子供の頃のイメージが強く印象に残っており、二代目の行動に対して先入観が優先して正しい評価をしない面が強くでる。後継者と目される者は、態度・言葉遣い・持ち物・服装は「らしさ」を保ち誤解されることを避け、旧体制を一新することに専念し信頼の確保に努めなければならない。経営者の約束違反、自分勝手な行動などは面従腹背の社員をつくることになり会社の業績は上がらないことになる。
◆ 6 使命感が強くリーダーシップのある人
創業者の場合は自分で考え自分の能力に合わせ会社を伸ばしてきている。中小企業の生産性の低さは時間の延長で稼いできている。生産性が低くても長時間働けば、目標の生産性は確保できる。また本来の仕事は8時間働いたとしても、その他に資金繰りの業務、金融機関の交渉、得意先との交渉、営業活動、人の採用等の業務があり、睡眠時間を削って命懸けで会社を伸ばしてきていると共に戦後資産の無い時代から今日の資産と組織を備えた企業へと育ててきた成功者でもある。自分の経営に自信を持ち、独りで企業を育て上げて来た会社は正に自分の分身でもある。
一方、後継者は恵まれた時代に欲しいものを豊富に与えられ、高等教育を受け経営システムは学んできたが、働くことは自分の好む仕事だけをして顧客相手の第一線での仕事は避けてきた者が多い。第一線の実務経験が無い為に企業業績が低迷すると社員に目標死守の命令はするが、自分ではより社内業務に引きこもる傾向が強い。命懸けで顧客開拓を行い、業績を上げて顧客のニーズを握る第一線の仕事をするという考えは少ない。基本的には全て業績は自分の責任であるという意見表明をたえず行って、将来へのビジョン・経営目標を明確に持って行動し、会社全体の利益計画を考え、私利私欲を抑えて、率先して顧客満足を満たすべく、第一線に出向く行動力が欲しいものである。
特に顧客意向(C・S)が経営のキーワードの時代、顧客のニーズをどう取り込むかが勝ち組・負け組を分けることになるわけで、経営者自らが顧客に出向く行動改善が、古い社員たちを経営者の考え方に近い働きをさせるように変化改善させることになる。また若い世代はマニュアル時代育ちで、どちらかというと企画力・創造力に乏しい面がある。出来ない理由を並べて言い訳をし、実行しないところがある。困難な局面において初めて実現可能なアイデア・方法が出て来るものである。極まった時には耐え抜く力、それが命懸けで極面打開に打って出た時に経営者としての能力は高まるものである。
◆ 7 変化に対し適応能力があるか
現在の経済構造は大きな変化を伴い、そして変化が急速である。経営者が状況の変化に素早く対応出来なければ、市場経済の中ではすぐに負け組に組み入れられてしまう。
変化することはチャンスでもあるがリスクも伴う。通常の経済状態の中でも企業は最低5年に一度は、体質改善のために大きな投資を行わねば時代に遅れるといわれている。失敗や失望のために極端にふさぎ込み社内に閉じこもるようでは変化に対応出来ない。自社の財務体質の許す範囲でリスクを恐れず新規の投資をしてゆかねばならない。特に経営者は財務諸表を読み、資金管理に明るくなければ適切な投資は行えない。普段から多角的に物事を見て経済構造の変化に敏感であり、環境の変化に適応出来なければ経営者としては責任を問われることになる。様々のグループに所属し多くの友人を大切に接し、情報収集力を高めてゆかねばIT革命の時代、企業再生は困難である。情報を多く集める人は様々なところに顔を出している。情報の集まるところに情報は集まり、価値のある情報は人対人で確保できるのである。
◆ 8 実務知識能力を身につける
仕事は幅広く一通りは出来ること。組織の大きな企業では異動によって数種の仕事は体験する。部下に相談されても体験のないことは指導・対応が困難であり、部下に仕事も任せられないし部下の信頼も得られない。経営者の重要な業務の中に社員の教育も含まれることは念頭に置きたい。また社員の長所を見つけ長所を伸ばすチャンスを与え、仕事に自信を持たせることが出来なければ部下は経営者を信頼して思うようには働かない。
更に後継者にとって部下に負けない特徴・実力を持つこと、特に営業活動でトップクラスの実績を上げること、金融機関との交渉で企業の信頼を確保し安定した長期資金の確保ができること、会計数値分析が日頃から出来る能力を養い長期経営目標を定め経営のロマンを語らなければ、社員は安心して後継者にはついて来ない。目標実績をクリアーしていれば、この経営者の下で将来安定した生活が確保でき、社員それぞれが思い描く生活が可能と評価した時、社員は組織の中で働き出すものである。
◆ 9 相続対策を早めに
中小企業特有の問題として、資産と経営の一体化の問題がある。中小企業では経営者の個人資産が企業の信用の形成の一部を成しており、資産の承継者が事業承継者となってポストについた場合には会社を取り巻く関係者に納得させ易い。
後継者には経営支配力の確保という意味では、株式をスムーズに承継させその相続税を避ける必要があり、収益を低く抑え内部留保が少ない状況に持って行く政策を計るべきである。対策の一つとしては家族役員の報酬を高めにし、不動産についても利用状況の再検討を行い地代を引き上げを計ることになる。結果的には法人プラス個人の所得額から税金の流出額を最少にする努力が計られる。
また企業の信用形成で主要な行為では保証人の問題がある。事業承継が息子に行われた場合に、先代の経営者が存命中は親子での金融機関への保証は足りる場合もあるが、先代の経営者たる親の死亡時には保証人が本人たる息子一人になってしまう。その場合、他人或いは親戚の者の保証を依頼する必要が生ずる。他人または親戚への保証依頼は逆保証も行わねばならぬことになり、避けたいものである。
中小企業での借入保証人の大多数は保証料の請求を行わず、保証した会社の業績開示も求めていない。更に一度保証人となると保証人は金融機関が解除してくれない。従って一担保証人になると保証した会社の奴隷になってしまう。また家族内での保証人を創るとなると、親からの相続時に事業承継者の妻への資産分与も計画に入れるべきである。資産保有者でないと金融機関は保証人としての認知度が低くなる。そこで資産収入のある物件があれば、これの一部を後継者の妻に相続させることを優先したい。
相続資産の事業承継者への相続対策は、企業経営上、法定相続分にとらわれることなく経営上必要資産を相続しなければ企業は存続することが困難である。そこで事業承継の上では遺言状の作成等を行い、会社経営を中心に相続させることが基本的に重要である。
◆ 10 健康を維持する体力
中小企業の企業活動は人対人で行われており、経営者の行動力が経営であるともいわれている。それはとりもなおさず経営者の人脈作りに負うところが多い。セールスマンが「商品を売る前に自分を売れ」とよくいわれるが、経営者の場合も大切で経営者として信用・信頼を売り込んでゆかねばならない。顧客に顔を出し先代の後を挨拶をして廻る。廻りながら顧客の希望・困りごと・苦情を聞き出して商品化を計り計り相手に利を与えることから始めて事業の承継が進みはじまる。
顧客と並んで大切なことは、金融機関との信頼関係を創り上げることである。経営に関する情報を金融機関から収集すると共に、会社に関する情報・長期計画等の情報を取引金融機関に提供し、主力取引銀行から信頼される関係を創りださねばならない。とても8時間労働で対応出来ることではない。
上記のような行動は経営者の信頼の根元であり健康でなければ勤まらない。まず精神的に根気強く事に当たれるか、ストレスをコントロール出来るか、更に重要な「決断力」を持ち合わせるかは正常な心身状態でなければ出来ないものである。経営者が大病を患えば優秀な社員は企業の将来を不安視し退職をする者も居り、取引先の中にも取引与信枠を落としてくる会社も出て来る。経営者の健康は会社全体の運命を変えると言っても過言ではない。
以上10個の項目を挙げたが、後継者選定事項として事業後継者候補に対し社内での行動に日々関心を払い時間をかけて育成に努め事業継承に心掛けるべきである。
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